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大津地方裁判所長浜支部 昭和34年(ワ)1号 判決

原告 国

被告 松田浅吉

主文

被告は原告に対し金十三万七千五百九十三円及び之に対する昭和三十三年十月二十五日から完済に至る迄年五分の割合による金員を支払え。

訴訟費用は被告の負担とする。

右判決は金五万円を供託したときは仮りに執行することが出来る。

事実

原告訴訟代理人は主文第一、二項同旨の判決並に仮執行の宣言を求め其の請求原因として、

(一)  訴外野村久次は労働者災害補償保険法第三条第一項第二号イに該当する強制適用事業である国道八号線舗装新設改良工事を行つている滋賀県湖北土木事務所所属の人夫なるところ、右土木事務所長浜出張所の世話役横田善次に命ぜられて、昭和三十年十二月二十二日午後三時半頃三名の同僚人夫と共に、米原町所在の工事現場で不用となつたコンクリート型枠五本を他の工具類と共にトラツクに積込んでこれに同乗して、同日午後四時頃長浜市田村町所在の田村神社横に到着し、同所から約三十米離れた現場事務所迄前記型枠を運搬したのであるが、この運搬が終つて更に長浜市地福寺町所在の倉庫に赴くために前記トラツクえ戻ろうとした際、同日午後四時二十分頃偶々田村町五百八番地先国道八号線路上に於て、訴外伊藤文之の運転する普通乗用自動車滋三あ〇一〇一号に接触され、その結果治療約十一ケ月を要する左大腿骨頸部外側骨折及び転子骨折の傷害を受けたので、原告(主管庁滋賀労働基準局長)は事業主たる滋賀県(管掌者木之本土木事務所長)との間に成立していた同法の保険関係に基き、昭和三十一年二月十六日から同年九月二十日迄の間に於て療養補償費金十万二千六百八十八円及休業補償費金三万四千九百五円合計十三万七千五百九十三円の保険給付をした。

(二)  ところが右傷害は被告の被傭者たる右運転手が使用主の事業執行のために自動車を運行するに当つて加えたものである。即被告は本件事故の当時運輸大臣の免許を受けて、一般乗用旅客自動車運送の事業を営んでいた者であり、右伊藤文之は其の事業の為の自動車運転手として被告に被傭されていた者であつて、右事故の当日右伊藤は被告使用の配車係員よりの指示に従い、長浜市内から乗客を乗せて前記自動車を運転して米原町内に赴き、同所で約十分間同乗客の帰るのを待つて、再び同乗客を乗せて午後四時二十分頃右事故現場にさしかかつた際、野村久次に対し前掲の如き傷害を負はせるにいたり、そのため同人に対し傷の治療費用金十一万五千三百六十八円(昭和三十一年八月三十一日市立長浜病院退院迄の入院治療費金十万二千六百八十八円とマツサージ代金四千六百八十円及び入院中の栄養食費八千円以上の合計金)を必要ならしめ、事故直前迄得ていた一日平均二百二十九円九十五銭の得べかりし賃金二百九十三日分(昭和三十年十月十日迄労働に従事出来なかつた為)合計金六万七千三百七十五円を喪失せしめた。従つて被告は自動車損害賠償保障法第三条により右損害を賠償する義務がある。

(三)  而して原告は右保険法第二十条の規定により支払つた前掲保険給付金十三万七千五百九十三円の限度に於て、右野村久次が被告に対して有する損害賠償請求権を取得したから、昭和三十三年十月九日被告に対して右金額を同月二十四日迄に納入するように納入告知書を発し、同書面はその頃被告に到達したけれども、被告はその支払をしないから、被告に対し右金員及び之に対する昭和三十三年十月二十五日(納入期日の翌日)から完済に至る迄年五分の法定遅延利息の支払を求めるため本訴請求に及んだと述べ、

(四)  被告の答弁に対し(1) 被告は訴外伊藤文之の使用者は松田電気電話自動車株式会社であると主張しているがそうではない。被告が運輸大臣の免許を受け松田ハイヤーの名称を用いて一般乗用旅客自動車運送事業を営み右伊藤文之を使用していたものである。このことは滋賀労働基準局は最初事故による損害賠償義務者を松田電気電話自動車株式会社と認定していたが、後日調査して同社に対する請求を取消し被告に対してその請求をしていることによつても明らかである。(2) なほ給食費及生計費は完全給食の設備のある同病院に入院したから当然しかも相当の出費であつて不必要に過分の方法を講じたものではない、入院治療のうちには直接医療行為のみならず栄養補給体力増強の為の給食も医療費用中に含まれるので、入院したため支出を余儀なくされた金額は事故によつて生じた損害である。又家庭に於ける生計費は入院によつて多少減少したかも知れないが、之は被告の使用者の不法行為による傷害の結果、被害者が入院を余儀なくされた為に生じた、いわば不法原因によつて利得せしめられたものであり、民法第五百九条の相殺禁止の規定に徴して差引くことは許るされない。(3) その他被告は訴外伊藤文之と野村久次との間に示談が成立したから本訴請求に応じられないと主張しているが、示談成立したのは右野村久次が伊藤文之に対して有する民法第七百九条の損害賠償請求権であつて、之と不真正連帯債務の関係にある野村久次が自動車損害賠償保障法第三条に基き被告に対して有する損害賠償請求権とは関係がない、仮りにそうでないとしても右示談は右保険金給付後なされたもので、且つ慰藉料に関するものであつて本訴請求権には影響がない。(4) 最後に被告の消滅時効の抗弁に対し、労働者災害補償保険法第四十二条第一項によつて消滅する権利は、保険料其の他この法律の規定による徴収金を徴収し又はその還付を受ける権利及び保険給付を受ける権利であつて、野村久次が被告に対して有する自動車損害賠償保障法第三条に基く損害賠償請求権は右法条の消滅時効にかかることはない。昭和三十三年十月九日附の納入告知書は会計法第三十二条によつて時効中断の効力がある。被告は本訴請求は自動車損害賠償保障法第三条に基くものであるから、民法第七百十五条の損害賠償請求権に基く催告をしても時効中断の効力を生じないというが、右保障法第三条は民法第七百十五条の特別法であるから法条を誤記しても時効中断の効果の発生に支障はない。即納入告知書の記載により昭和三十年十二月二十二日長浜市田村町に於ける被告の労務者伊藤文之の過失による野村久次の業務上の負傷の損害賠償の請求であること明らかな以上時効中断の効力あること勿論であると述べ、

立証として甲第一号証乃至同第四号証同第五号証の一乃至十五同第七号証乃至同第十七号証を提出し、証人伊藤文之同武田正男同山下庄一同野村久次の各訊問を求め乙号各証の成立を認めた。

被告訴訟代理人は原告の請求を棄却する訴訟費用は原告の負担とするとの判決を求め、答弁として原告主張事実中滋賀県湖北土木事務所が労働者災害補償保険法の強制適用事業をなし、訴外野村久次が同所所属人夫として働らいていたこと、滋賀県がその事業主であつて原告との間に同法の保険関係が成立していたこと及び原告が右野村久次に保険給付をしたことは争う。右事業主は木之本土木事務所長であつて之と原告との間に保険開係が成立している。野村久次が原告主張の日時場所に於て原告主張の如き自動車により傷を負つたことは之を認めるけれども、伊藤文之は訴外松田電気電話自動車株式会社の使用人であつて被告の使用人ではない。被告は旅客運送業の免許を受け之を右会社に貸与して営業させていたから名義貸与の責任があるとしても、それは正常の取引関係についてだけであつて不法行為関係には及ばない。従つて被告が右伊藤の行為につき責任を負う必要はない、のみならず野村久次が原告主張の如き損害を受けたことは争う。同人は昭和三十一年八月三十一日完全に治癒したから其の後の休業は損害に加へるべきではない。なほ右負傷は業務上の原因に基くものではないから労働者災害補償保険法規定の保険事故ではない。野村久次は原告主張の日時場所に於て道路の西側に停車しているトラツクから道路に降り、道路東側の溝に放尿の為道路を横断したが、横田善次から呼ばれて引返すとき事故に遭つたのであつて、右は軽犯罪法第一条第二十六号に該当する犯罪行為を構成し、その行為中に遭難したのであるから業務上の原因に基く負傷ではない。業務上の負傷としても同人が交通頻繁な国道八号線を横断する際、当然なすべき左右の交通状況の注視をしなかつた為、注意すれば容易にさけ得た傷害を受けたのであるから、右注意を怠つた被害者に重大な過失がある、従つて原告には保険給付の義務はない。又運転者伊藤文之は自動車運転上の注意を怠らなかつたし、自動車に構造上の欠陥も機能上の障害もなかつたから賠償責任はない。仮りに保険給付の義務があつて給付したとしても被害者野村久次は前述のように重大な過失があるから、損害賠償額を決定するには之を参酌し過失相殺すべきである。又医療補償費中の完全給食費用は勿論生活費も右野村久次の得べかりし利益としての休養中の賃金収入から差引かなければならないと述べ、抗弁として本件事故については当事者たる運転手伊藤文之と被害者野村久次との間に於て、金五万円を授受することによつて示談解決しているから、原告は野村久次の損害賠償請求権を承継することはない。仮りに然らずとするも労働者災害補償保険法第四十二条第一項による徴収権は二年を経過すれば時効により消滅するが、原告は昭和三十一年九月二十日迄に補償したから同法第二十条の規定により同日右野村久次の損害賠償請求権を取得しているので同三十三年九月十九日に時効によつて消滅した。従つて権利消滅後の訴提起にかかる本訴請求は棄却すべきである。又右法条の適用がないとすれば民法第七百二十四条により被害者が損害及加害者を知つた昭和三十年十二月二十二日から三年経過したとき時効により消滅している。原告は時効完成前である昭和三十三年十月九日本訴請求金額を納入すべき告知書を発したので時効中断したというが、告知書には民法第七百十五条による損害賠償請求権を労働者災害補償保険法第二十条により取得したから請求するとあつた。然るに本件は自動車損害賠償保障法第三条の自動車運行者としての被告に対する賠償の請求であるから右告知書の発送による時効の中断は別個の請求につきなされたものであつて本訴請求権に対して中断の効果は生じない。従つて本訴の請求は時効完成によつて権利が消滅した後の提訴であるから之を棄却すべきであると述べ、立証として乙第一号証乃至同第七号証同第八号証の一、二同第九号証同第十号証の一乃至三同第十一号証を提出し現場の検証を求め、証人伊藤文之同野村久次同西川佐久司の訊問を求め被告本人訊問の結果を援用し、甲第一号証同第三号証同第八号証同第十号証の官署の作成部分を認め、同第七号証同第十二号証は不知と述べ其の余の甲号証は全部成立を認めた。

理由

訴外野村久次が昭和三十年十二月二十二日長浜市田村町の国道八号線に於て、訴外伊藤文之の運転する自動車に接触して負傷したことは当事者に争はないが、滋賀県湖北土木事務所が労働者災害補償保険法の強制適用事業をなし訴外野村久次が同所々属人夫として働らいていたこと、滋賀県が其の事業主であつて原告との間に同法の保険関係が成立していたこと及原告が右野村久次に保険給付をしたことは被告の争うところであるから之等の点につき按ずるに、成立に争のない甲第二号証に証人山下庄一の供述を綜合すると、湖北土木事務所の国道八号線舗装新設改良工事は労働者災害補償保険法の強制適用事業として、滋賀県が其の事業主で原告との間に同法の保険関係が成立していることが明らかであり、証人野村久次及西川佐久司の各供述によれば野村久次が右道路工事の人夫として右土木事務所に雇はれて働らいていたことが認められ成立に争のない甲第五号証の一乃至十五同第十六号証及山下庄一の証言によると野村久次に対し診療費十万二千六百八十八円、休業補償費三万四千九百五円合計金十三万七千五百九十三円の保険給付をなした事実が認められる。なお被告は伊藤文之は訴外松田電気電話自動車株式会社の使用人であつて被告の使用人ではないと主張しているから按ずるに、自動車損害賠償保障法第三条は自動車の所有者或は使用権者と運転者との間に使用関係あること、事業の執行について等の要件を要しないのであつて、被告が自己の為に伊藤文之をして自動車を運転させていた事実だけあればよいのであるが、成立に争のない甲第九号証同第十七号証乙第八号証の一及伊藤文之の証言並に被告本人訊問の結果を綜合すると、伊藤文之は右会社に雇はれ昭和三十年十二月二十二日被告が認可を受けて営んでいる旅客自動車運送業に使用していた普通乗用車に乗客を乗せて運転中長浜市田村町の田村神社附近の路上に於て野村久次に衝突せしめたものであることが認められる。次に右野村久次の受けた損害の点について争があるが、成立に争のない甲第五号証の一乃至十五同第十号証同第十一号証証人武田正男の供述及それによつて成立を認めることが出来る甲第十二号証によると、野村久次は大腿骨頸部外側骨折兼転子骨折により昭和三十年十二月二十三日から翌三十一年八月三十一日迄二百五十三日間入院し、退院後同年十月十日迄四十日間自宅休養したこと及び入院診療費十万二千六百八十八円マツサージ代金四千六百八十円を要し、休業により金六万七千三百七十五円相当の賃金収入を失つた(内金三万四千九百五円の休業補償を受けた)ことが認められる。ところが被告は右負傷は業務上の原因に基くものではないと主張して、保険給付を争うから此の点につき判断するに、公文書であつて成立を推定される甲第一号証同第三号証及野村久次の証言を綜合すると、同人はトラツクでコンクリートの型枠を長浜市田村町の現場事務所え運び終り、更らにスコツプ十挺を長浜南高等学校グランドにある現場事務所え運ぶ途中、同所附近の田村神社横の国道八号線上で立小便をしようとしたところ、世話役横田善次に呼ばれたのでトラツクに引返えそうとして自動車事故にあつたものであることが認められるのであるが之は業務上の事由による負傷であるといわなければならない。けれども被告は運転者伊藤文之は自動車運行に関し注意を怠らなかつたし、自動車に構造上の欠陥も機能の障害もなかつたのに反し、被害者野村久次には重大な過失があつたから被告に損害賠償の責任はないと主張しているから審按するに、成立に争のない乙第二号証によると自動車に故障がなかつたことは認められるが、運転者伊藤文之が注意を怠らなかつたという主張は之を認める証拠がなく、却て乙第二号証及成立に争のない甲第四号証を綜合すると同人に過失のあつたことが明らかである。而して成立に争のない乙第三号証野村久次及西川佐久司の各証言によると、被害者の野村久次にも左右の往来安全を確認する注意をしなかつた過失があつたことは認められる。ところが自動車損害賠償保障法第三条には(1) 自動車の運行に関し注意を怠らなかつたこと(2) 被害者又は第三者に故意又は過失があつたこと並びに(3) 自動車に構造上の欠陥又は機能の障害がなかつたことを証明したときは損害賠償の責任を免れる旨規定されているが、之は右三つ共証明出来たときに始めて損害賠償の責任がないというのである。然るに本件の場合は右の内(1) の証明が出来ないのであるから被告に於て損害賠償責任を免れることは出来ない。又右被害者の過失は被告の責任に影響はない、のみならず過失相殺するとしても訴外野村久次は前述認定した通り慰藉料を除いて治療費金十万七千三百六十八円、休業による損害金六万七千三百七十五円合計金十七万四千七百四十三円の損害を生じているのであるから、内金十三万七千五百九十三円の本件請求金額は支払う義務あるものといわなければならない。又被告は入院中の給食費及生活費を休業中の賃金収入から控除すべしと主張するが入院診療費中幾何が給食費か区別出来ない入院中の生活費も家庭に於ける場合と比較しどれだけ減少したか明らかではない、仮りに右双方共数額が明らかになり家庭に於ける消費が減少していたとしても、之れ訴外伊藤文之の不法行為によりたまたまそのような結果が生じたのであるから不法原因給付の返還が求められないのと同様の理により差引く必要はないものと解する。

最後に示談解決したとの抗弁並に時効の抗弁について按ずるに前者の存在は成立に争のない乙第六号証及証人伊藤文之同野村久次の供述によつて認めることが出来るが訴外野村久次の伊藤文之運転手に対する請求権と使用者である被告に対する請求権とは、不真正連帯債務の関係にあつて一方との示談は他方に影響を及ぼさない、のみならず右示談は慰藉料だけに関するものであつて、右乙号証と野村久次の証言によるも本件に於ける診療費と休業補償費とは関係ないこと明らかであるから本件の請求権に消長を来さない。又後者については被告は労働者災害補償保険法による権利は二年の消滅時効にかゝるから昭和三十三年九月十九日に権利は消滅している。仮りに右時効にかゝらないとしても民法第七百十五条の損害賠償は三年の消滅時効にかゝるから、昭和三十三年十二月二十二日の終了と同時に権利は消滅している、同年十月九日の納入告知書の発送は本件と別個の請求権についてなされたものであつて時効中断の効果はないと述べている、けれども本件の請求権は労働者災害補償保険法第四十二条の徴収金でも保険金でもないから、同条第一項により二年の時効で消滅するものではない。然れども被告が自動車損害賠償保障法によつて保険契約を締結してあつて原告がその保険金を請求するのであれば同法第十九条によつて二年の消滅時効にかゝるが、本件は該保険金の請求でもない。本件に於て請求しているのは、訴外野村久次が被告に対して有する自動車損害賠償保障法第三条の権利を労働者災害補償保険法第二十条第一項により取得したものであるから、右保障法第四条により民法第七百二十四条の消滅時効の規定に従うのであつて、消滅時効の完成するのは昭和三十三年十二月二十二日の満了した時と解すべきである。而して本訴の提起は昭和三十四年一月二十九日であるが、原告は再抗弁として時効の中断を主張し被告之を争つているので更らに此の点につき按ずるに成立に争のない乙第十一号証甲第十四号証同第十五号証及証人山下庄一の供述を綜合すると、昭和三十三年十月九日原告は滋賀労働基準局を通じて被告に対し、訴外伊藤文之が長浜市田村町に於て昭和三十年十二月二十二日訴外野村久次を自動車事故により負傷せしめたことにつき、右野村久次の有する損害賠償請求権を労働者災害補償保険法第二十条によつて取得したから、同月二十四日迄に納入せられ度い旨の告知をなし、同告知は同月十七日迄に被告に到達したことが明らかである。而して右告知は法令の規定に基き国がなす納入の告知であるから会計法第三十二条により時効中断の効力がある。被告は右乙第十一号証には民法第七百十五条による権利を右保険法第二十条により取得したとあるから、本件自動車損害賠償保障法第三条の権利と別個のものであつて時効中断の効果を生じないというが、右各証拠により原告が納入を告知したのは右保険法第二十条第一項により取得した右野村久次の被告に対する交通事故による損害賠償請求権に基くこと明らかであるから、その根拠となる法条の指示に誤りがあつても時効中断の効力は生じている。果してそうだとすると被告は原告に対し主文掲記の金額及び之に対する原告指定の納入期日の翌日である昭和三十三年十月二十五日から年五分の遅延利息の支払を免れない。従つて本訴原告の請求は全部之を認容すべきものであるから、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条、仮執行の宣言につき同法第百九十六条を各適用して主文の通りに判決する。

(裁判官 福原義晴)

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